悪夢令嬢は一家滅亡の夢を見た ~私の目的は生き延びることです~
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悪夢令嬢は一家滅亡の夢を見た ~私の目的は生き延びることです~

近衛悠/大菊小菊/泉乃せん

愛はなにものにも勝る

ネタバレ
2025年2月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 2巻まで読んで先が気になって、ウェブで原作の方読んで来たので結末を知っての長文レビューです。
巻き戻りではなく、何かしらの魔法もない、ただの予知夢で未来の自分と一族の破滅を見たヒロインのファリティナが、どうにかして兄弟たちと家を守ろうとひとり闘う話。試し読みが良かったので買ったのですが、やはりめ〜〜〜っちゃ良かった。
ファリティナにとって義弟であるセリオンとの年相応な、微笑ましいやり取りや、ジェミニとの心安らぐような時間がずっと続いてほしいと思ってしまうほどに彼女に降り掛かる現実は辛く悲しいものばかりです。それに拍車をかける、無知で無関心な婚約者の第二王子・ギデオンとその友人(作中では恋人と噂されているが真偽はふたりとも詳らかにしていない)アマンダの存在がまた煩わしい。婚約者以外をそばに侍らす意味が分かっていない時点で王子に対する好感度は地の底。自分は不貞と思われても仕方ない行為をしておきながら、婚約者の悪い噂を否定もせず自分で何とかしてほしいとは、守る気もゼロで笑わせますね。
そんな中、兄弟たちで旅行に行った先でジェミニが毒を盛られ、ファリティナが付きっきりで看病しているのを見に来たセリオンとのシーンで、憔悴し乱れたファリティナの髪を優しくかき分け静かに姉の名を呼ぶ、その優しくも仄かな温かさが、ギデオンが呼ぶファリティナの名前の薄っぺらな温度と全く違って、一瞬この二人が義理とはいえ姉弟であることを忘れてしまうほどでした。
お互いを大事に想い合っているのに二人は一緒にはなれない。原作ラストを読んで、ファリティナも実は好きなんじゃないのかなと私は感じたのですが、姉として、兄弟として愛したいという感情にも取れるなとも思いました。だとしても王子ルートはないです。コミカライズもどれだけ改変しても構わないけれど、最後に王子と結ばれるエンドだけはやめてほしい。
あとは、公爵家を陥れようとした人たちに対しての原作での断罪は少し軽め。アマンダへの処罰も明確には言われてなかったので、この辺をコミカライズでもう少し詳しく読みたいところです。
ファリティナの愛とセリオンの愛はおそらく種類は違うのだろうけど、まさにこれは愛の話です。なにものにも勝る、愛の話なのです。
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