最終電車の恋人たち
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最終電車の恋人たち

ダヨオ

勇気の報酬

ネタバレ
2025年2月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 試し読みで心掴まれずっとカートに入れていたのですが、『YOUNG…』シリーズにそれほどハマらなかったこともありなかなか手が出せなかったダヨオ先生のアラフォーラブ。
良かった……いや良かったなんてものじゃない。
それなりに生きていればたいていのことを経験し、感情に疲れたり始める前から何かを諦めたこともあるだろうアラフォー世代の筋金入りの行動力の無さが、誇張するでもなく見事に表現されています。
しかもキスだけでよくもここまで読者をドキドキさせられましたね??一種の区切りとして結ばれる描写はできれば入れて欲しいと思うタイプのこのわたしでも、まったく不足を感じませんでした。
それにしても春江さんの可愛いことよ…好意のある者同士会えるだけでもうれしいのに、やれ吹出物だとか体臭だとかをいちいち気にしちゃうその気持ちがもう恋だよねえ…少しでも自分を綺麗に見せたくて右往左往しちゃう(捻挫した時大笑いしてしまった)春江さんの、乙女なのにあざとくない心の動きが恥ずかしいくらいに伝わってきました。
同様に、ハイスペックゆえ春江とは別の意味でいろんなことに臆病になっていた藤嶋の言動や素振りも素晴らしく哀愁が漂っていた。しかも春江と藤嶋で視点が交互に入れ変わるのでより2人の気持ちが分かりやすくて。
チャンスは万人に訪れるというけれど、それをチャンスだと認識し掴み取れる勇気がなければなかなかこの2人のようにはいかないのかも…あるいは、無いはずの勇気が出ちゃうほど惹かれてしまうとか。そういう意味ではやや藤嶋の男気に助けられた格好の春江さん。くっついたらくっついたで「自分が最後の恋人になればいい」と眠っている藤嶋に呪いをかける自信のなさも一本筋が通っています。
同性婚の法制化にも言及されていることですし、じっくり腰を据えて読みたいと思えるBL作品です。
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