或るシカリオの愛
」のレビュー

或るシカリオの愛

砂原糖子/稲荷家房之介

イメージと違い重厚でシリアスな内容でした

ネタバレ
2025年3月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『猫屋敷先生と縁側の編集者』シリーズが面白くて、こちらも読んでみました。内容は、明らかに実在する南米の国を舞台にしながらも架空の国だそうで、私にはその国は明るいイメージなのですが、ストーリーは重くて暗めでギャップがありました。ていうか…タイトルにキーワードが入ってるんですよね。そもそも明るくなりようがないのですが、英語でなかった為に(言い訳です)単語の意味を知らなくて、良いイメージを持って読み始めてしまった訳です。ジャンル的に苦手な人もいるかもしれないので、タイトルの意味を調べてから読み始めるのが良いかなと思います。
ストーリーは、外国なのに映画でも観ているように情景が思い浮かぶので、さすが先生と思いました。稲荷家先生のイラスト効果も絶大でした。心理描写については…深いのは勿論、含みも多くあった気がします。行間を読ませるような、ハッキリと言葉にしないのに何となく察せられるような、絶妙な言葉選びでした。明らかに『猫屋敷先生と〜』のカジュアルさとは違うと感じましたので。
「幸運と幸福は、必ずしも同じではない」自分はツイていると明確に理解できても、幸福は終わったとも思っている。…というルカの言葉。その、似て非なる2つのもの…人によっては同質のものである場合もあるし、どちらか一方でも充分ではないかと思う人がいる事を考えると、どちらも望んでしまうルカの複雑な気持ちが分かる気がしました。
その道では一流ではあるのに何処か欠けた状態の二人が出会い、それぞれに再生・生き直しをする重厚なストーリーでした。
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