午後の光線
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午後の光線

南寝

生きるとは

ネタバレ
2025年3月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ 読んでいる時は、なんだか最後、2人で死んでしまったり、どっちかがどっちかを殺してしまったりといった、恐らくこれを読む人の多くが想像したであろう終わり方を私も想像しました。2人の儚くてかけがえのない日常よどうか終わらないで、、と願うように読んでいたのですが、そんな不安な気持ちが何だったんだろうと思うくらい、あまりにも呆気なく、実感もなく別れがきてしまったことに衝撃を受け、言葉を失いました。ずっと死を意識して、それに囚われて生きてきた2人が、お互いの存在をきっかけにちぐはぐに、でもまっすぐ純粋に、お互いを自分より大切に想い、死への概念が変わり、生き方が変わり。きっと最初だったら淀井くんを後追いしてしまいそうな危うさのあった村瀬くんが、淀井くんのくれた美しくて暖かい上書きされた記憶を胸に、きっとこれからも生きて行くんだろうとそう思えた最後が、1番泣けました。いつもすぐ隣に黒く染まった死があったお話が、美しい情景と共に生きていくお話になったこと、でも、2人は一緒に生きていけないこと、あまりに切なく、でもどこか温かく救われるような、とても不思議で素敵な作品でした。メリバは辛いので本来苦手なのですが、飯田くんや柿沼くん、なんだかんだで哲郎さんも、2人の周りの残された人達も素敵で、村瀬くんはきっと大丈夫だと思えるのが、救いでした。本当に読んで良かった、出会えて良かった作品です。
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