3番線のカンパネルラ
」のレビュー

3番線のカンパネルラ

京山あつき

失恋のヒリヒリの描写が素晴らしい

ネタバレ
2025年3月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ 名作だと聞いていて、詩的なタイトルから表紙の飄々とした風貌の彼の爽やかな恋の話だと想像していたのに、実は彼は前の恋人につけられた心の傷からまだ血を流しているような、情けない感じの人でした。そして彼が線路に飛び込むのではと勘違いして救ってくれた高校生のカンパネルラは、なんと新しい恋の相手ではなく。ちょっとウザい上司は、「やっと飲んだか」の一言とともにまるで違う人のように見えてしまう。そんな、いくつもの驚きに満ちた作品でした。

重い自分を持て余して苦しむ加納くんが、「服も小物も映える胸元のセクシーな人」に見えている人もいる。前彼のかけた呪いが解けてよかった。きっと、周りのゲイ友も前彼に話を合わせていただけで、本当にバカにしていたわけじゃないと思うよ。店長と良い恋をして、加納くんがそんな風に考えられるようになったらいいな。あなたの恋が、カンパネルラの心に何かを残していたらいいな。

加納くんの失恋の痛みがあまりにもヒリヒリしていたので、何だかひたすら彼の幸せを祈るレビューになってしまいました。いやほんと、ヒリヒリの描写が素晴らしかったです。前彼なんて回想でしか出てこないのに、こんなに苦しみ続ける作品は初めて読んだかも(あ、「STAY GOLD」の日高くんがいた!)。何度も読み返したい、愛おしい作品でした!
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!