仕立て屋と坊ちゃん
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仕立て屋と坊ちゃん

大島かもめ

もう何度も読み返してる

ネタバレ
2025年3月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ 大島かもめ先生にハマるきっかけになったのも、初めてオジ受けの魅力に気付かせてくれたのもこの作品。最近の作品に比べると絵柄に癖があり、話運びもぎこちない感じですが、私はそこがすっごく好きです。
20歳の大学生、秀一郎に熱烈な求愛を受けるのは、42歳の仕立て屋、片山さん。秀一郎はアプローチの方向が明後日なので片山には全く相手にされず、辛うじてセ●レの座をもぎ取ったはいいものの、全然恋人として見てもらえない。しかし!秀一郎は考えも甘く言動も子供っぽいんだけど、メンタルだけは鋼なので、どんなにつれなくされても何度でも立ち上がり思いの丈をぶつけていきます。ひたすらそれがを繰り返すうちに、2人とも自分自身と向き合って、少しずつ心境に変化が表れていく様子が丁寧に描かれていて、とても読み応えがありました。
片山さんは繊細で傷つきやすい人なのかもしれない、傷ついても直ぐに立ち直れるほど若くもない、そんな彼がいつ飽きて心変わりするかもわからない20歳のボンボンにそうやすやすと本気になれる訳もない。秀一郎と寝るのは「気持ちがいいから」というのも言い訳っぽく聞こえます。エチシーンがとても印象的で、見えない構図でサラッとしてますが、普段は無口な片山さんの全身から彼の正直な想いが伝わってくるようです。何度も試して、自問自答も繰り返して、ようやく秀一郎の胸に飛び込んでいけたラストには、初読み当時片山さんと同じ42歳だった私は、彼の安堵が伝わってきて目頭が熱くなりました。
あと、「これ笑っていいのかな?」って感じの際どいジョークが物語の至る所に散りばめられており、イギリスが本場の仕立て屋との恋の演出に一役買っていました。2巻番外編に出てきた遊園地のマスコット。無邪気に名前を叫んで一緒に写真を撮ってもらう秀一郎でしたが、さりげなく不安を煽ってくるところ、タダモノじゃないですね。「ロウゴ・コドクダーネ三世(42)」ご丁寧に名前に年齢まで含まれていて思わず吹き出しましたが、「これって私のことでは?」と一瞬で現実に引き戻されました(笑)
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