プルーストの恋人
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プルーストの恋人

縞ほっけ

香りと記憶の結びつきに縛られた思い出

2025年3月18日
パチメーカーの人事課に勤める普段は真面目ぶっている男の会社に、オフの素の時にワンナイトした男が新入社員として入ってきたことから始まる恋のお話。
嗅覚は五感の中で唯一直接脳に信号を送れることから、香りや匂いは記憶との結びつきが強いと言われています。三崎は西田が吸っていた煙草の香りにとらわれ続けることで、全てを諦めた今を肯定して生きてきたのかなと思いました。そんな三崎の想いを吹き飛ばすくらい真っ直ぐな伊織の強さと笑顔が、三崎の凍りついた心を優しく溶かしていく様子が丁寧に描かれていてとても良かったです。
そして、言及するのを避けて通れないのが三崎の想い人、西田。三崎の想いを感じ取りながらも、決して懐には入れず、三崎の気持ちを利用するかのようにつかず離れずの関係を続ける彼のズルさは、スパイスというには効きすぎるほどの印象を残したのではないでしょうか。最後まで見えない西田の本音が気になるところではありますが、誰に対しても本気になれない西田には彼なりの苦悩があると思いたいです。
三崎と伊織はまだくっついたばかり。ぜひ続編で二人のラブラブをもっと見たいです。そして、西田の本音も聞かせてもらえたらありがたいなと思います。
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