ベイカーベイカーパラドクス
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ベイカーベイカーパラドクス

暮田マキネ

ユキはどちらが幸せだったんだろう

ネタバレ
2025年3月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 交通事故で記憶の欠落&幼児退行したことにより、後ろめたい思いを持たずオミといられる世界と、フラッシュバックがきっかけで記憶が戻り、だけどそれを隠しながらオミといる世界。

どちらも愛し愛されているのは同じだけど、ユキの心中は全然違うでしょう。

一度結んだのにほどかれるネクタイ。元に戻りそうになる一人称。(ちなみにノリちゃんの前ではハッキリ『僕』と言った。だからノリちゃんは絶対気付いてる)
これらとずっと付き合っていくのか。
ユキの精神保つんだろうか。

たぶんそういうのを心配したから、事故直前(15、6歳くらい?)のユキが18歳のユキに「本当に後悔しないの?また同じことを繰り返すんだよ」って言うシーンがある。
それに対し18歳のユキが「どんなに傷付いても傷付けても一緒にいないとダメだよ」と返す。

この会話があるからモヤモヤしちゃうんだと思う。それならユキは記憶が戻ったことオミに言うべきでは?って。
だって今のままじゃ結局記憶喪失だった頃と一緒じゃない?
オミはユキが記憶戻ったと知らないのだから、ユキが自分に「好き」と言ってくれてもそれは最近のことと捉えるわけで。
オミを性的対象に見ていたあの頃のユキのまま思いを告げて貰えるのとは意味が違うのでは。
だってオミ「何で忘れちゃったんだよ」って泣いてるんだよ?

でももしかしたらこの先変わるかも知れないしね。
何かきっとそうなる気がしてきた。
ユキ、タイミング見てるのかも。
それだったら事実をユキ以外から知らされたら可哀想だから気を付けてね。
ノリちゃんかヤマになるんだろうけど、ヤマといえばこの子は人生3周目くらいなんですかね。
高校生にしてこの落ち着きっぷり。鈍感弟は気付かないユキの秘密もあっさり見破り、クールだけど理解あり懐でかくて親切。ついでにイケメン。
ヤマならもしかしたら言葉選んでオミが傷付かないようにしてくれそうだけどやっぱり…ってもはや描かれていない先のことまで妄想が止まらなくなっている自分が怖い。
そろそろ止めよう。

実に暮田先生らしい、闇深くて複雑な傑作でした。
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