陰と日向のボーダーライン
」のレビュー

陰と日向のボーダーライン

大島かもめ

作者買いです

ネタバレ
2025年3月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 表題作3話+描き下ろし、「街角のエピローグ」前後編。短いのにとてもきれいにまとまっている2作品。対照的な読後感でしたが、2作品とも読み応えがありました。
表題作はかなりヘビーな内容ですが、読者がその後を連想できる要素がさりげなく押さえられていて、共依存モノとして満足度の高い作品でした。「無事に共依存の関係が成立してめでたしめでたし」という、いつもなら堕ちていくしかなさそうな2人の未来にゾクゾクしながら読み終えるところですが、なんせ私も丸山と同じ穴の狢。自分の黒歴史がフラッシュバックして、不必要な感情移入をしてしまい、脳が勝手に2人の未来に希望を持たせようと、彼らの行く先を阻みそうな問題の解決策を考え始めてしまいます。描き下ろし以外は一貫して丸山目線で語られるのも、私の余計なおせっかいを加速させました(笑)
そういう私情は脇に置いておいて、大島先生の描く表情の素晴らしさには毎度感動を覚えます。この作品はとくに表情が重要な要素になっているせいもありますが、セリフのない顔アップのコマが凄い量の情報を与えてくれます。エチの時の表情は言わずもがなですが、ラストで柴村が丸山に顔を近づけながら「嬉しいんです・・・」と言う時の顔。妖艶で自信を感じさせる、初めて見る柴村の表情に、彼の心情の全てが詰め込まれている気がして鳥肌が立ちました。
「街角のエピローグ」の方は、2人の性格が陰と陽で対照的なところは同じでも、一転して明るいお話。正反対の2人が少しずつ馴染んでいく過程が丁寧に描かれています。イタリア人らしからぬ生真面目で陰気な男、ロベルト。コミュ力最強な天性の陽キャ日本人留学生ユースケ。このお話も片方(ロベルト)の視点のみで進んでいくのですが、きちんとユースケの大事な表情が押さえられているので、お互い惹かれ合っているんだなと伝わってきます。だからなのか、ラストまでの展開が早くても置いてけぼりにならず、気持ちのいい読後感を味わえました。ここからというところで終わっていても全く物足りない感じがしなかったです。
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