逢縁カタルシス
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逢縁カタルシス

大島かもめ

作者買いです

ネタバレ
2025年3月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 竜次目線のシーンが多いせいか、竜次の生い立ちや過去ばかりが明らかになっていく反面、近藤について分かるのは、被災して職を失い大阪にやってきたということだけ。何でかなと思いながら何度も読み返していて気付いたのは、生い立ちや過去よりも、物語冒頭の近藤がどういう状態なのかがとても重要なのではないかということでした。過去に積み重ねてきたものが根底から覆るような地獄を体験してきた直後だと思えば、心がキャパ越えしてフリーズ状態にあり、表情も感情も乏しく、どことなく虚ろな感じがするのも頷けます。そんな彼が、竜次の気遣いや優しさに触れる度、少しずつ自然な笑顔を見せるようになり、更に竜次に恋をして湧き上がってきたエネルギーは、彼にようやく生きている実感を与えたのではないでしょうか。何気ない日常の描写にも愛しさを感じました。
近藤は竜次を自分のものにしたいという願いに突き動かされるように、真正面からアプローチしていきます。「ちょっと調子に乗りすぎなんじゃないの?」と見ているこちらがハラハラするくらい、竜次のパーソナルスペースにずかずか入り込んでいきます。ここで竜次の懐の深さと柔軟な心が顕わになるのですが、図星を指されても怒らず受け入れる。それどころか竜次は近藤の言葉をきっかけに自分と向き合い、おざなりにしてきた問題の解決に向けて自ら動いていく。
自分からけしかけておいて、予想以上の変化を遂げる竜次に焦る近藤でしたが、そこからの初エチまでの流れが神懸っていて、不意打ちだったこともあり鳥肌が立っちゃいました。これはもう「とにかく読んでみて下さい!」としか言いようがないです。子供の様に夢中で欲しがる竜次と、見事竜次を縋りつかせた近藤の何とも言えない表情に、私は昇天しかけました。
被災して凍り付いたままだった近藤の心を溶かしたのは、竜次の温かい人柄でした。竜次のその温かさの裏には、幼い頃からの苦労があって、生きるために守り続けていたはずが、守るために生きるようになっていて、ずっと息苦しかったと思います。失うものなど何もないかのような恐れを知らない近藤の姿を見て、今度は竜次が抑え込んでいた想いを解放し、ラストは竜次の曇りのない笑顔で締めくくられていました。欲を言うなら、生まれ変わった2人の再出発を続編にして欲しいです。絶対面白くなるはず!
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