螺旋じかけの海
」のレビュー

螺旋じかけの海

永田礼路

一気に読んでしまいました

ネタバレ
2025年3月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 近未来の遺伝子操作が一大産業となっている世界のお話。
治療のために開発された遺伝子操作が暴走し人間以外の動物の遺伝子を持った者が世代を超えて出現する事態になるが、その頃には異種体組織が一定以上だと「ヒト」として保護されなくなるという法律ができている、という展開。しかし、人為的に作られたものが原因なのだからこれは公害や薬害なのではないかと思うが、結局世界は権力者の都合のいいように変えられていくということか。
医師である作者の専門知識に裏打ちされた細かな設定が物語にリアリティを持たせています。
異種化に苦しむ人たちの苦悩や切なさが描かれるとともに時々コミカルな要素もあり重苦しい雰囲気ばかりではありません。生体操作師として苦しむ人たちを治療するオトを見ているとブラックジャックを思い出します。
「ヒトとモノの境界はどこか」「人間と他の生物を区別するものは何か」、医療技術が進歩している今この作品のテーマとなっているような医療倫理的な問題はすでに起こり始めているのではないだろうか。各国が倫理的・宗教的な理由で規制しているが、ひとたび政情不安や独裁国家などになったら権力者に都合のいいように変えられてしまうのではないか、そんな怖さがありました。
全体としての起承転結もしっかりしていたし、一話毎にもドラマがあって切なさや感動で何度もウルウルしました。素晴らしい作品でした。
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