メロウレイン ふったらどしゃぶり
」のレビュー

メロウレイン ふったらどしゃぶり

一穂ミチ/竹美家らら

土砂降りが穏やかで優しい雨になったような

ネタバレ
2025年3月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ メロウの意味は「優しい」「心地よい」「穏やかな」「落ち着ける」「円熟した」などがあります。本編の激しい雨と比較してタイトル(メロウ)を彷彿とさせるゆったりとした内容が多い短編集でした。

本編から共通してあるのは、基本何か重要な出来事や心境の変化・分岐点にある時にはいつも「雨」である事ですが、今回は季節によっては「雪」になったりします。でも内包するイメージはどれも温かく、小さな幸せに気付いて大きな幸福感を得られるようなものばかりでホッとしました。

幾つかの短編では、実在する地名や名前が出てきて興味深く読みました。特に「京都の伊勢丹にしか売ってない土産」というのが、気になって仕方なく…それが何であるかを突き止めたくてネットで調べまくってしまいました(結果は分からず仕舞いで残念です)

どれも宝物みたいに素晴らしい話ばかりで、何気ない日常や会話に小さな感動がたくさんありました。中でも私が一番好きなのは《海を見に行こう》で、名前のトリック(大げさでなく仕掛けと言えるレベルの事)に驚かされました。先生は、いつから構想を練っていたのかと、小説家としての才能に恐れ入ったし、本編のプロット段階から?…だとしたら天才だと思いました。

本編は激しい嵐のような雨のイメージで、何かと生々しく痛々しい場面が多かったけど、こちらは本当にゆったりした気持ちで読めました。
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