間の楔
」のレビュー

間の楔

吉原理恵子

BLラノベの原点にして孤高の傑作。

ネタバレ
2025年4月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ この作品を知ったのは、某動画サイトで公開されていたアニメ(OVA)からです。作画は古く、現在の美麗なアニメとは比較できませんが、物語がたまらなく斬新かつ魅力的でラストは衝撃的でした。cvは現在ではあり得ない超豪華キャストで、みなさん名演技でした。特に、主役•イアソンのcv.塩沢兼人氏(故人)の演技は伝説の神演技で、このアニメが今もファンから愛されている所以となっています。
 私は声優•塩沢兼人氏のファンでもあったので、その後、CD(ラジオドラマ)の神演技に酔いしれ、次いで原作ラノベの読破に進みました。

 私には初めて読むBLラノベでした。
 一読して「エッ、これがラノベ?」と困惑したぐらい物語の世界観が壮大かつ緻密でした。舞台は近未来異世界。だからこの物語はSFBLとも言われていますが、かなり特異な世界観です。第1巻ではこの近未来世界のシステムにかなりの行数が割り当てられています。そして、読み進むにつれて、この設定は必要不可欠だとわかります。現在の我々の常識、倫理観が通用しない世界観の設定です。
 イアソンのリキへの愛は、今で言う、執着愛、溺愛の一種と言えますが、この物語世界のシステムでは〈禁断の愛〉などと言う甘々な単語で表現できない〈あり得ない愛〉です。
 アニメを視聴してラストを知っていながら、原作は違う終わり方をしないだろうか?いや、アレ以外のエンドはあり得ない、アレは一種のハッピーエンドだ、、、と泣きながら思考は堂々巡りし、、、読了後の余韻は言葉では説明できません。
 現在、BLラノベと並びBL漫画も手軽に電子書籍で入手出来るようになり、数冊読みましたが、この作品を越える余韻を得られたものはありませんでした。
 アニメは最近(?)リメイクされました。BLアニメのリメイクは前代未聞ですが、この原作なら納得です。BL作品は黎明期から隆盛期へ移っています。名作は時代とともに新たな解釈ができます。これはもうBLの古典にして原点になる傑作です。ハッピーエンドに慣れた方には重い物語ですが、読了後の感動は心の奥底に響きます。読み応えのある物語をお探しの方にお勧めします。価格も良心的です。
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