このレビューはネタバレを含みます▼
名作って書いといてなぜ星4つなのかというと、主役カップルがあまり好きではないからです(良い子達ではあると思ってるけどちょっとイラっとするところがある)。
その個人的趣味を横に置いて「名作」と言わしめるこの作品、読み放題で読めるので、ファンタジー好きは一度は読んでみてほしい。
〜〜〜〜〜
古代日本を舞台にしたSF要素混じりのファンタジー。一神教と多神教の関係も考えさせられる、日本的宗教観を見直せる作品。
ラストに駆け足感はあるものの、作者さんの描きたいものは全部描けたのではないかと思います。
「多様性」の本来の意味を保っているのは日本だけではないかと思っているので、「海外では〜」に踊らされずに日本的価値観を大事にしたい、そんな思いを強固にする……善と悪についてなどいろいろと考えながら読める、貴重な作品。
ドラマチックな場面もたくさんあって、丁寧な描き込みでの素晴らしい仕上がりになっています。
そんな中で、実は自分にとって最も印象的なのが、ラスト近くの、桂とかつて天音信徒だった女性とのやりとり。人の本質はなかなか変わらない、一神教に入れ込むタイプというのは常に拠り所を他者に求めるのだな、と、そら恐ろしく絶望的な気持ちにおそわれました。
すっごい細かいことながら引っかかるのが、トオコとヨオコの名前で、あの漢字を当てると歴史的仮名遣い(つまり昔の発音)ではトホコとエウコになるはずだから音の共鳴はしないんじゃないかって部分。
そんな私の推しは、断然、桂と青比古です。覚悟があって自制心があって他人のために動ける、凛とした二人。ぜひぜひ、この二人に注目の上、お読みください。