大きくなったら女の子
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大きくなったら女の子

御厨稔

ジェンダー論とかそんな感じ

ネタバレ
2025年4月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ 男女の立場が現実と違う世界の話。
サイエンスフィクション的な視点から見ると、この社会はちょっと成立が難しいんじゃないかな……って思ってしまうので星の数が伸びません。大きい個体が「女性(産む性)」になるのは良いとして、この世界の男女比の分布で、猫みたいな多胎妊娠ではない人間という種が繁栄するのはちょっと厳しい気が。いくら双子率が高いという設定を持ってきても、子供を産むことができる期間は20年程度、女性が産むことに専念していないと、近代以前の状況ではあっという間に人口が減るだろうし……粉ミルクが無い時代は母乳で育てるしかないわけだし……。
ジェンダーというものを考える機会としての作品ではあります。が、おそらくは作者さんが抱えているであろうジェンダーへの複雑な思いであるとか性的指向であるとかを整頓しながら描いている印象で、エンタメとして読むには私はちょっと。あくまで、現実のジェンダーについての戯画化という感じで、異世界を構築しているのとは違う気が。
また、この作品に限らず、ジェンダーについて扱うものは、「種として」と「個として」の問題が分けられていないものが多い気がします。ジェンダーは、誰かが決めたものではなく、人間社会が続いてきた中で「種としての生存」を有利にするための積み重ねという一面もあると思っています。過去の積み重ねを尊重した上で、「個としてのあり方」を別問題として尊重する、そんな意識を自分は持ちたい。
ついでに、個人的には、「女の子」になった個体が髪を切って着飾らないようになるという設定が、母親になったらオシャレする必要ないだろ?っていう思想と重なってしまうのが少し苦手でした。

BL作品を多く描いてらっしゃる作者さんの別名義。
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