このレビューはネタバレを含みます▼
幕末から現代を生きる長寿の化け猫と、過労で死にかけていたリーマンの異種間恋愛。
まずは試し読みにて、噺家として活躍する化け猫・喜八のエネルギーに圧倒されすぐに購入を決意。パアンとハリセンを叩く音、よく通るその声が本当に聞こえてきそうなほどキャラが生き生きとしている。すごい。たった数ページ、ごくシンプルなコマ割りなのになんなのだこの熱量は…これは絶対に面白いだろうなと確信しつつも、この時点ではまだ星三つ。それから化け猫界のしきたりに従い伴侶となるまでの多事多難、喜八に都合の良い情報のみが開示され矛盾に耐えきれなくなった草太が不信感を露わに距離をとるまでが、星四つ。それから…夢を伝って草太に会いにいく化け猫ならではのトンデモ展開で一気に胸が熱くなり、ついにここで星五つとなりました。
通常、想いが通じ合う時は天にも昇る気持ちで浮き足立つものだけど…この2人は逆にそれぞれの抱える恐れや弱さをさらけ出すところに繊細さが滲み出ていてとてもよかった。
そして物語は続く。寿命に差はあれど、それでも出会えてよかったと、人生を共にできてよかったと日々を愛おしみながら暮らしていくんだろうな〜と安心できるあとがきも読めてよかった。
偉そうに批評した最後に…草太は運良く化け猫と出会い再生することができたけれど、それはこの物語の主人公だからスポットライトが当たっているだけなのであって…今この瞬間も家路を辿れないほど無気力になったり吸い寄せられるように死を選んだり、救えず手のひらからこぼれ落ちる命もあるのだということを放念することなく描き留めている先生が好きです。