午後の光線
」のレビュー

午後の光線

南寝

生きて。

ネタバレ
2025年4月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ ネタバレなしでというレビューを守り、読みました。
表紙からして明るい終わり方が想像できなかったとはいえ、あまりに突然で衝撃的で村瀬同様涙も出なかった。

比較するものではないけど私は村瀬よりずっと淀井の方が気がかりで、心が麻痺しているのが顔にも投影されていて、淀井は「俺が村瀬を助けるよ」と言っていたけど、まず君が助けられろ!って思った。
哲郎さん、あなた褒められた人間ではないけどどうやらそこまでクズではなさそうね?じゃあ何で、何でそれを義理の息子になる予定だった宏太に伝えられなかったんだろう。もしかしたら何かが変わっていたかも知れないのに。あまりに辛くて受け入れ難くて、八つ当たりみたいになっちゃってごめんだけど。
真里子に対しても最初は思うところがあったけど、理由を知れば同情はする…けど…母と言えど人間だから仕方ないけどでもやっぱりあなたは「母」で守るべきものがあって…ってこれも今更言っても仕方なくて、彼女に対しては複雑な思いばかり湧く。とにかく今は心配、それだけ。

読後の虚無感がすごい中、唯一の光は村瀬だった。合唱コンクールの挨拶一言もどもらず言えたんだね。
ただ一つ心配なの、まだ涙が出てこないと言うから。
中学生(よね?)なんてまだまだ子どもで大人から全力で守られなければならない存在。子どもは辛い時は泣かなくてはいけない。
神社の境内で淀井とお弁当を食べている村瀬が泣いたとき、淀井が「もう全部イヤだっ」て泣きじゃくり村瀬に抱きしめられたとき、涙のシーンなのに私はとても安心したんです。こうやって悲しみを外に出していけるというのは救われるための一歩だと思うから。
お互いそれをさらけ出せる人に出会えたのに…ああ私も時間差で涙が出てきました。

あまりに辛い現実だけど村瀬は生き続けなければならない。大丈夫飯田も柿沼もいる。
淀井に救ってもらったんだから、それを無碍にしたら淀井が浮かばれない。だから石に齧りついてでも生きて。そして幸せでいて。
一読者からの勝手な、でも心からの願い。
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