戦場まんがシリーズ
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戦場まんがシリーズ

松本零士

敵も味方も得るものがないのが戦争

ネタバレ
2025年4月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ かの有名な松本零士先生が描く、戦争がテーマのオムニバス作品。全て一話完結です。
既刊は9冊、様々なタイプのお話が収録されていますが、アニメにもなり特に印象に残った一編が“音速雷撃隊”。
主人公は野中(アニメでは野上)少尉、“桜花”で特攻予定です。桜花は母機の一式陸攻に吊り下げられて運ばれ、目標の敵艦を捉えると切り離されて、中にいる人間がロケット噴射し艦に体当たりするという最悪の“人間爆弾”、まさに棺桶です。

特攻前夜、野中と一式陸攻の搭乗員たちが酒を酌み交わしながらする会話。特に何でもない普通の雑談が流れるように続いていくのですが、その全てがグサグサ心に突き刺さります。
中でも山岡中尉の「この戦争で死んだ世界中の若いのがあと30年生きていたら色々なことをやっただろう、せっかく生まれてきたのに…」という言葉が胸を打ちました。
また日本軍だけでなく、米軍側の立ち位置からの描写もあります。敵でありながら、戦死した彼等にも夢があったり家族がいた。物語の最後の最後で敵艦の艦長が口にする、「敵も味方もみんな大バカだ」という台詞がもう…。まさにその一言につきます。
戦中に海軍航空隊におられた方のインタビュー動画を視聴したことがあります。当時の経験をお話された後、「戦争は勝った側も負けた側も何も得るものがない」とおっしゃっていました。
経験者の方の言葉は実に重いです。全ての地域から紛争・戦争が消えて欲しいと願わずにはいられません。
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