このレビューはネタバレを含みます▼
入野子爵邸の前に捨てられていた少年•朝陽は、夫人の情けで当家の使用人として育ててもらいます。一人息子で一つ年上の透理は、朝陽を弟のように可愛がってくれました。大学生となった今、透理は自分の身分や立場に息苦しくなると、朝陽を求めて温室にやって来て二人の時を過ごすのでした。ある夜、素行の悪い子爵邸でのパーティで媚薬を飲まされた透理は、帰宅するなり朝陽に助けを求めてきます。透理に手を貸すうちに自分も興奮してしまう朝陽でしたが、何とか抑えて透理を楽にすると当主の部屋へ行きます。透理の父である子爵から、今夜のパーティの主催者の処分を指示された朝陽は真っ直ぐに子爵邸へと向かうのでした。入野家のために汚れ仕事をすること、透理の知らないところで朝陽と子爵との間にはそんな契約が交わされていたのでした。身分、世間、契約、そんなものが何もないゼロの世界で相手だけを見つめ、愛してゆきたい二人を描く大正ロマンな恋物語です。背が高くイケメンな朝陽には、透理の陰に控えていても目を惹く華がありますが、年上美人の透理にも、いつのまにか可愛い存在になっていたり、やっぱりお兄ちゃんだったりと、作者さまらしいちょっと甘さのある男前に仕上がっています。