少女終末旅行
」のレビュー

少女終末旅行

つくみず

「終わるまでは終わらない」終末の寂寥感が

ネタバレ
2025年5月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ 素晴らしいです。
読んでいると『世界の車窓から』を思い起こす、終末の世界をただ眺めている気分になる作品。
これ以上の「終末」作品を私は見たことがない。
チトとユーリ、二人はほんの少女であり、知っているのは自分達の見た範囲だけ。読者に届くのもその範囲だけで、過去の姿は垣間見ることしかできず、真相を詳しく知ることはできません。その匙加減が素晴らしい。
目標のために進むこと、進むためには動くこと、動くためには食べること……現代日本で頭でっかちに過ごしていると忘れがちな、シンプルな「今を見ること」も思い出させてくれて、少し呼吸が楽になります。
旅の途中でたまに人に会ったりはするわけですが、別れた先のその人達がどうなったのか……詳しいことはわからないし、少女二人も特に意識はしていないのですが……読み進めていた時にはっきりわかるセリフがあって、ヒュっと手の先が冷たくなったのを覚えています。
4巻までアニメ化もされており、とても良い出来なのでぜひ。オープニングとエンディングも、歌詞・曲・映像3拍子揃って素晴らしいです。自分の視聴時はまだ漫画が完結しておらず、「ええ〜?途中までなの〜?」って不満がありましたが、あれは、この作品世界での「人類の未来」が確定したと読者に提示された時点だな、と気付いたので、アニメの最終回はあそこで良かったのだ、という気持ち。
一般的に言うような「救い」はありません。
「終わりの終わり」は誰にでも訪れるし、それは他人が救うことができるものではない、けれども「終わる」ことそのものが「救い」であるとも思います。
それを迎えるのが、二人であったなら……悪くないよね、と。
〜〜〜〜〜
同著者『シメジ シミュレーション』に、この二人の姿があります。それを「ゲスト出演」と見るか「その後」と見るかはあなた次第。
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