兄だったモノ【単話版】
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兄だったモノ【単話版】

マツダミノル

一番ヤバいのは誰だ選手権

2025年5月8日
……という様相を呈している、病み系作品(だと思う)
45話まで読みました。
「恋愛」「ホラー」に分類されていますが、これはいい意味で「違う」。
表面上ではその分類でも間違ってはいないと思いますが、恋愛と言うよりはヒューマンドラマ寄り、ホラーと言うよりサスペンス寄り、というように自分には見えます。
主人公の鹿ノ子ちゃんの危うさがすごくて、引き込まれました。アレは本当に「兄」なのか?それは本当に「恋」なのか?歪さもある中で純粋さも感じる兄妹関係、あの輝きは偽りなのか?
そして、鈴蘭に喩えられた中眞という男は、いったいどういう人物なのか……?
各話タイトルや作中に入れ込まれた聖書や古典や文学作品のエッセンス、背景に描かれた花の花言葉、かなり細かい部分までこだわって描かれているのだろうと思います。それらを何も知らなくとも支障なく読めて、ある程度知っていれば理解が深まる、そんな描き方です。宗教画を読み解くのに似ているかもしれません。
作中にもはっきりと出てきますが、芥川龍之介『藪の中』に通ずる感じがとても良い。オムライスをめぐる各人の言うこととかとても良い。ぬる〜っとした気持ち悪さを常に抱えつつ、「アレ」はいったい何なのか探りつつ読むのが楽しいです。名前にも意味を持たせていそう。
「事実」は常に一つなれども「真実」は人の数だけ存在する……と思っているタイプにおすすめです。
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