ロッカバイディア
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ロッカバイディア

暮田マキネ

作者買いです

ネタバレ
2025年5月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ 養父母からもらった愛情に報いるためだけに生きる累。そんな累の傍に居続けるにはどうすればいいのか考え続けてきた八尋。元々危うかった均衡が崩れたのは、累の養母の妊娠が発覚してから。どんどん自分を追い詰めていく累も痛々しかったけれど、累の夢遊病に気付いた時の八尋が自分を責めるシーンはもっと切なかった。八尋の累への献身は、累を自分に繋ぎ留めておくためだったかもしれないけれど、どうしてここまで求められるがままに与え続けられるのか?人一倍愛されて育ったようにも見えないし、自分だって欲しいモノは少なからずあるだろうに。それだけ彼にとって累という存在が絶対に何より失いたくないものだったってことなのかな。物語の中盤なんて、ただの竿状態になっていて、それでも累から離れようとしない八尋が不憫でした。累の境遇の不憫さは分かりやすいけれど、八尋は自ら不憫を買って出ている感じでした。
累自身はいつか八尋との関係を終わりにしなければいけないと考えていたわけで、そのいつかがくるまではと曖昧な関係を続けているような状態だったから、養母が妊娠して加速度的に状況が悪化して逆に良かったのかもしれない。行くとこまで行かないとどうにもならないコトってあるよな~って思いました。でも本当、八尋が報われて良かった。累には何も求めないのに、累の欲しいものは与えるということをし続けてきたのは、結局累自身が八尋の隣を選んでくれないと意味が無いと思っていたからなのかもしれないと思いました。
難しいテーマなのに、人物一人一人の心情描写が丁寧で、すごく読み応えがありました。何度読み返しても飽きずに読める、素晴らしい作品です。
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