このレビューはネタバレを含みます▼
先生の作品は『アフターグロウ』に沼って三作目です。あちらはヤク◯とかの裏社会特有の暗さがありました。こちらは、大学が舞台の一般人(助教授)の話しなんですが、時代背景とか社会通念の古さから来る違った意味の暗さがあった気がします。
一冊の中に様々な要素が凝縮されて、かなり読み応えがありました。「昭和」「学生運動」「ストーカー」「家庭環境」「年の差」など…これら一つ二つでもそれなりに複雑なストーリーが出来上がりそうなのに、そこへBLを絡ませるとなれば、必然的にドラマチックな展開になると思います。特に「ストーカー」は、まだ該当する単語もない時代ですから、鵜飼の受けた恐怖はかなりのもので、その衝撃がリアルに伝わってくるようでした。
面白いというよりは、軽めの文学作品を読んだような余韻が残る作品です。