還らずの夏【特典付き】
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還らずの夏【特典付き】

暮田マキネ

暗めの話なので地雷がある人は事前に確認を

ネタバレ
2025年5月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ 5作品からなる短編集でした。一番目の表題作と四番目の短編は、メリバ風というか…切なさに振り切った感じの結末でした。先生の作品は、大体どれも可愛さという明るい要素はあるものの、純粋さ故の儚さや心の隅の仄暗さを感じることが多いですが、それでも大半はハピエンなのに今回は大分暗かったです。表題作内にあった「救われないことが救い」という言葉。矛盾しているけど納得してしまうのは、それが真実だからだと思いました。

2・3番目の短編は、受け・攻めそれぞれの視点からの話になっています。これが先生初のオメガバースだそうで…2話分なので凝った設定・展開はなかったけど、先生らしさが出ていて良かったです。私は、この2話が一番いつもの作風に近かったと思います。切なさと思いが通じた喜びがバランスよく表現されていた気がします。

五番目の話は、構想が素晴らしかったです。ストーリーそのものは、メリバ寄りの独特の空気感があってやや暗めなんですが、心理描写の表現方法が秀逸で素敵でした。英語と日本語で気持ちを伝えるシーンで、前半と後半のニュアンスが変えてあるんです。これには読んでる時に気がついて、さり気ない所にセンスが光ってると思いました。

漫画と言えども「言葉」の力は大きいと思うので、そういう意味では一番目と五番目の「言葉」には感動させられました。
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