春のデジャヴに踊れ
」のレビュー

春のデジャヴに踊れ

おどる

五感が刺激される

ネタバレ
2025年6月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 初めましての作家様でした。
初コミックスなんですね。絵がとても綺麗で見易いです。「おどる」先生だけあってそちら方面に長けているのでしょうか。作品を見ていてもダンスがとても好きなんだなということが伝わってきました。私はダンスについて無知ですが用語や意味を知ることは楽しかったし、単純に美しい踊りのシーンを見るだけでも楽しめました。

大学生の晃介も社会人の淳も華麗なダンス作品にぴったりの美しい男性です。
漫画だけど映像が浮かびます。スタジオの描写では嗅覚や聴覚も刺激され、「お腹で伝達」というのを知って細身の2人のおなかの感触はどんなかしら…なんてことも想像しちゃったりして。

何やら相当の覚悟を決めてダンススタジオに入っていく晃介。ここからスタートです。
ここは母が経営していたスタジオで久しぶりに訪れた場所。言い換えればしばらく来ることが出来なかった場所。ステップの音、フロアの匂い、生まれる風等大好きなものたちと相反する辛い思い出があるから。
晃介の目の前でフロアに倒れた母、その瞬間に流れていた音楽、それらが晃介の脳裏に焼き付いてしまったのだ。でもいつまでも後ろ向きではいけないと、変わるために訪れたスタジオで1人の男性と出会う。それが淳。大人の余裕があり踊りも色気たっぷり、惹かれるのに時間はかからなかった。

晃介にとってこのスタジオが特別なように、淳にとってもこの場所は特別だった。淳はここで初恋をしたから。相手は晃介の母。何とまあ…。でもドロドロした感じではなくて淡い憧れみたいな感じだったのでホッとした。晃介の為にも晃介父の為にも、何より淳のことを軽蔑したくなかったから不倫とは無関係で良かった。
晃介に母の面影を見る淳、そのことに晃介は気付いている。それでも好きという気持ちは止められない。その気持ちに向き合う淳が誠実そのもの。考えるのを諦めずちゃんと悩んでくれた末に出したこたえ、この覚悟が実に男らしい!
ちなみに晃介の告白の場所も、淳が返事した場所も、スタジオ。初めてのキスも。2人が将来について思い悩んだ後の、覚悟を決めた晃介の告白と、その後母の愛した音にのって2人踊った場所も(屋上だけど)。ここはやはり2人にとってずっと特別な場所であり続けるのでしょう。
これからも2人でステップを踏みながら一歩一歩進んで行って欲しいです。
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