君と宇宙を歩くために
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君と宇宙を歩くために

泥ノ田犬彦

やられた!

2025年6月4日
表紙とタイトル、あらすじを見て、あーヤンキー君と純粋君が出会って宇宙飛行士めざそうみたいな?天体や宇宙って青春の夢にうってつけのツールだし?みたいな感じで読み始めたとたん、ガツンとやられました。
宇宙って、そういう意味か!1巻無料に感謝。
身内の「普通が難しい」に向き合ってきたので、本人は勿論、見守る家族の気持ちも身につまされます。
ヤンキー小林君がすごいのは、恥ずかしい、悔しいという気持ちから逃げずに宇野君から学ぼうとしたこと。
自分のことをバカだと言っているけど自分の出来なさを認めるのは大人だって難しいよ!君はデキる子だよ!と声を大にして言いたくなります。
しかも、どうすれば伝わるのか、問題を解決できるのか考える労力を惜しまず、ものすごく丁寧に言葉を紡ぐ。それは宇野君のお姉さんやバイト先の上司など、周りの登場人物にも共通していて、それがあるから事態が良い方に進んでいく面もある(幼なじみの朔も、ちゃんと言葉にして伝え合うから単に無理解な登場人物ではなくなっている)。
普通はそこまで労力をかけて通じあおうとはしないので、小林君が危ないバイトに誘われたように世間から弾かれていく『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治/鈴木マサカズ)のような現実も一方にはあるわけで。
それでもこんなふうに人と人が関わりあえれば、特段ドラマチックではない学校生活や日常の中でも、1巻で星を教えてもらった小林君が空の点が点ではないと知った世界、4巻で組体操に挑戦した宇野君の高い視点から見えた世界、宇宙を一緒に歩く二人の世界がこんなにも広がっていくんだ!と、読む方にも新しい視界を開いてくれる作品です。
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