弟の顔して笑うのはもう、やめる【単行本版・描き下ろし特典付き】
」のレビュー

弟の顔して笑うのはもう、やめる【単行本版・描き下ろし特典付き】

神寺千寿

すっごく上手い作家さま

ネタバレ
2025年6月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ 何が上手いって、漫画を描くという一連の全てに感心してしまいます。
まず作画の上手さ。
背景からコマ割り、木の葉の隙間から差す陽の光と影、水面の輝きとか風が吹く感じ。
ストーリー展開での起こった事象に対しての事後でのその内訳等々・・・上手いなぁと感じます。
5年前、シーモアに入会して最初の読み放題の登録で出会った作品。
題材としてはよくある再婚で家族になった子供同士の恋愛のお話。
当初は、まわりくどい展開と何だか暗い雰囲気と気だるげなヒロインに好感は持てなかったのですが、子連れの再婚という、二つの家族が一つになっていくその過程にそれぞれの背景が大きな傷を抱えていたりして、一筋縄ではいかない事情が明かされてくると、ヒロインが何故自分の気持ちを流されないように押し殺してでも頑なに家族を維持したいと思うのか、その気持ちも理解できるような気がして・・・。
幼い頃、手をしっかり繋いでいたはずの弟、その手は何故離れてしまったのか・・・自分を責める気持ちと共に、母を、家族を、壊したくないと願う想いはひとしおに強いのだと物語の中で表現されているのを感じます。

長く追っていた作品の完結を見届けられて感無量です。
TL括りではありますが、その為に前半の義弟のシーンなども描かれているのでしょうが、TL味はほとんど無く青年漫画かと思うほど真理や感情の機微ををえがいた作品に思えます。
読み放題にて。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!