あなたの愛など要りません
」のレビュー

あなたの愛など要りません

冬馬亮/ありおか

心に残る物語

ネタバレ
2025年6月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ 間違ってしまったヒロイン。それを命を張って巻き戻そうとするその息子。間違いの根源となった息子の父。謎の灰色フードの人物。息子の父が最愛と呼んでいた愛人。息子からみたら叔父にあたる優しい父の弟。
結婚とは、夫婦愛とは、親子愛とは、人生とは、そしてなによりも愛するとはなんなのか‥‥何度も同じ箇所を読み返したり、時に涙を拭ったりとすごく深く心に残るお話だった。気楽にパラパラめくるのではなく時間を掛けてじっくり読み進めて欲しい。
2が出たので追記します。息子の父は白の世界の住人となる。そこには灰色のフードを被った者がいて、そこは時間も距離も現実さえも超越した世界。父は時折フードの者から水鏡を通して今の世界を観る。かつての妻、そして息子、父母や弟、そして共に暮らした女とその間に生まれた娘。弟とかつての妻との間にも子どもが生まれていて‥‥‥今、過去と様々な場面を見る中で元夫は沢山の気付きを得る。灰色のフードの者から言わせると、元夫の心にはヒビがあり、それが塞がっている部分もあるらしい。そのヒビが埋まるのか、そのままなのかそれはフードの者にもわからない。ただ元夫の中に元妻だけは今も強く存在していて‥‥読み進めながら様々な感情が溢れる。元夫が気付かなかった深い苦しみ、元妻、息子達本来の家族の哀しみ‥‥もしも心のヒビが埋まり、生まれ変わったならば元夫達はどうなっていくのだろうか。灰色の者の言葉通り、それは誰にもわからない。ただ哀しみの中に一筋の光が射せばと願いたくなるお話だった。
いいねしたユーザ2人
レビューをシェアしよう!