ポーの一族 ~春の夢~
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ポーの一族 ~春の夢~

萩尾望都

このエドガーは、私のエドガーではなかった

ネタバレ
2025年6月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ 中立の3です。
話自体はさすがに面白いんです。良かったと思うんです。
ただこれを『ポーの一族』として読めるかというと……違かったんです。
あの、黄金の詩情に満ちた「はざま」の存在としてのエドガー……ふわっと目眩をおぼえるような不確実な存在としてのエドガーは、ここには居ないと感じてしまった。ここに居るエドガーは、「実際に存在する人間」であり、あの決して掴むことができないエドガーとは別の存在である、と。
若い頃にしか描けない物語というのは確かにあると思っていて、『ポーの一族』という作品は若い頃の感性や不安定さがあってこそのものであったように思います。
キャラクターは作者のものであり、だからこのエドガーこそが本物なんです。
それでも、私は私の中に居るあの「エドガー」を大事にしたい……それくらいはきっと許されると思う。
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