言ノ葉ノ花《コミック版》
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言ノ葉ノ花《コミック版》

三池ろむこ/砂原糖子

これは苦しい…でもそれを超える愛

ネタバレ
2025年6月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 人の心の声が聞こえる。
ファンタジー設定なので比べるのは違うかも知れないけれど友人にHSPの方がいます。今は大分落ち着いたけど昔はかなり辛そうでした。余村の姿が当時の彼女と被りました。

人は裏表がある。本音と建前がある。そんなこと解ってはいても実際に他人の心の声が聞こえてしまったらこんな恐怖は無いだろうなと思う。
同じような設定でコメディチックに描かれた作品は結構あるけど、それこそザ・ファンタジーで元々興味が持てない分野ということもあり読むことは殆どありません。
が、こちらは続編も含めのめり込みました。ファンタジーとはいえおふざけなしで描いてくれた世界に共感しました。HSPの友人のことがあったからかも知れません。感受性が強く繊細でいつも疲れていた友人。自ら周りの空気を敏感に読み取るのと、勝手に心の声が流れてくることの違いはあるけど、辛さの種類は同じだよなあと、いつも体に重石を乗せているような余村の姿を見ていて同情を禁じ得ませんでした。

人間の裏表を嫌というほど体験した余村は、新しい職場で長谷部と出会う。初めてと言ってもいいくらい心の声と実際の声が一致している人。そんな彼の自分への好意を聞いてしまった余村は動揺する。ここらへんの余村の戸惑いだったり罪悪感だったり、そんな中でも多少浮かれてしまう気持ちだったりの描き方がとても上手い。徐々に長谷部に惹かれていく中長谷部の妹にトラブルが起き、余村は自分の特殊能力で解決しようとするが、それがきっかけでとうとう長谷部に打ち明けることになる。その後の2人は見ていて辛かったが長谷部の反応を責められるわけがない。後に長谷部も言っていたけど、心の声が聞こえるのも辛いけど聞かれてしまうのもとんでもなく怖いだろう。そんなの気付いて当然のように思うが、この時の余村は少々能天気で自分本位に感じた。でもいよいよ長谷部に本格的に避けられていると気付いた後の、駅のベンチで大粒の涙を落としながら神に祈るシーンはやはり可哀想で泣けてきた。そして…現れてくれました長谷部!(泣)
あなたが怖い、それでも好きだと余村を抱きしめた長谷部の正直さと強い愛に再び泣けた。
本作も続編も長谷部が男前過ぎます。精神的に弱い余村を、口数少なく無愛想に見えるけど一本気な長谷部が支える姿が尊いです。
こちら気に入りましたら、ぜひ「言ノ葉ノ星」も読んでみて欲しいです。
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