悪役令嬢の中の人~断罪された転生者のため嘘つきヒロインに復讐いたします~
白梅ナズナ/まきぶろ/紫真依
このレビューはネタバレを含みます▼
完結おめでとうございます、感涙。
世に数多ある『転生悪役令嬢モノ』の中でこの作品ほどに、悪役令嬢を愛し、幸せを願ってそのためだけに奔走した『中の人』は見たことが無いように思う。
幸せな未来=ハッピーエンドというゲームの中では主役は『主人公』で、どんなに世界が幸せになってもそのハッピーに悪役令嬢が含まれない。
でもその世界に転生したと知った時、ならば知る限りの不幸は取り除きたい、そして誰よりも悪役令嬢レミリアの行く末を案じ幸せを願った『中の人』エミ。
彼女の、早逝し絶たれた前世の家族との大切な記憶やレミリアたんに対する思い、転生してなお変わらない一生懸命さや素直さが様々なものを動かしていく。
その最たるものが、悪役令嬢レミリア。
この物語は、転生により入れ替わってしまったゲームの悪役令嬢を幸せにするべく奔走するも
努力むなしくゲームのキーポイントである婚約破棄で関係性の拒絶に遭い絶望したエミと、
エミの愛を一身に浴びつつも中からでは支援も助言もできなかったレミリアとが
『中の人』を交代する場面から始まる。
ゲームの悪役令嬢レミリアは、婚約者に執着し嫉妬絶望で世界を危機に晒す。
エミが幸せにしようと奔走したレミリアは、「エミならこうした」と『エミのレミリア』の姿を胸に世界を救っていく。
悪役令嬢レミリアの中には今や大切な人が眠っていて、エミが大切にしてくれたレミリアであるという誇りがある。
ゲーム軸で考えると世界の危機は想定通り進むし、エミの転生でレミリアが『中の人』になったようにゲーム主人公ピナ(星の乙女)も入れ替わっていたり、最後の最後までエミとレミリアが直接語らうことがなかったりと世界観にブレがないのが大変好ましい。
作画も繊細。
この絵があるからこそと思うのが、
エミのレミリアと、レミリアが演じるエミのレミリア、今のレミリア自身、そして、本来のレミリアとがそれぞれ違うと納得させられるところ。
エミの目を気にする『なりたいレミリア』の模索がとても微笑ましい。
エミが幸せにしたかった少女は、
ついに世界で一番幸せになった。
大切な家族と、どうか幸せでありますように。
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