このレビューはネタバレを含みます▼
単行本を待ちきれず、16.5枝から単話買いしています。
毎話感想を書きたくなるしキリがないのですが…20枝(1)の上京エピソードが響きすぎたので書き殴ることにしました。
矢野久哉という学生をひとことで表現するなら、運を天に任せることのない自責の人。地元青森。最寄りの高校が廃校になり、選択肢が狭まる中でも自分のことは自分で決められるしっかりとした性格の持ち主。家庭環境の複雑な苑とは逆に、家族仲も良好でまっすぐに育った彼でありますが、唯一、あまり裕福ではないことが地味にネックになっている。
自分は長男。かわいい妹たちや身体の弱い親に心配をかけたくないと、強い子を演じるあまり時折緊張の糸が切れてしまい(そのたびに苑と支え合うエモ展開が待ち受けているのは、作品を好ましく思う読者さまの誰もが知るところだと思います)……家族友人恋人苑にもっと素直に甘えればいいのに、どうしてそこまで意地を張るんだい??と常々疑問に思っていたのですが、好きだから、大切だから甘えられないタイプの人間なんだ…そんな過剰なまでに相手の負担を考えてしまう自責の男・矢野の原点を見たような気のする20枝でした。
そう思ったきっかけは、矢野が両親に上京と寮生活の報告をする20枝(1)冒頭のサイレントな回想シーン。
短いし、セリフもなく淡々とコマが進んでいくのだけれど、打診を受けたご両親の表情が、本当に本っ当〜に真に迫っていまして…
衝撃を受ける、魂が抜ける、ショックで言葉が出てこないなどなど、どんな表現が適切なのかわからないほどに動揺し、見るからに抜け殻となっているのです。「久哉は家計を気にして無理をしているのではないか、寂しい思いをさせるんじゃないか」…きっといろんな考えが頭の中を駆け巡っているのでしょうけれど、それでも最終的には息子の決めたことを応援できるご両親だから矢野は自主的にやせ我慢をしてしまうのかも。
そんな矢野が、苑に甘えられる日が来るとは……
以上が20枝(1)で、(2)は打って変わりラブラブ苑とのクリスマスマーケットデート。もうすぐ高校三年生。部屋割りに進学に、不安の渦巻く2人だけれど…いつもながら「僕たちなら大丈夫」とばかりに気持ちを確かめ合う営みがとってもいいのですよね。
なにやら新キャラの気配もあり。苑のお家事情も含め、今後も目が離せません。