グッドバイライラック
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グッドバイライラック

ゆき林檎

無言の間や目線で語るような深みがある

ネタバレ
2025年7月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 初めての作家さんなので断定的なことは言えないけど、他作品も似たような印象ならば「ストーリー性重視」の作家さんかなと思います。帰結までの展開や心理描写がとても丁寧で、小説の行間を読ませるに近い空気感もあって、そう感じました。あと、言葉に良い意味で含みがあって、無言の間や目線でさえも何かを語るような、深みがある気がしました。

それを強く感じたのはラストの「俺のこと…好き?」と聞かれての返事、「愛しいよ」でした。加藤を含めて読者のほとんどが期待していたのは、多分「好き」で、それ以外の言葉は不正解で不誠実に感じてしまったのではないかしら。でも私は「愛しい」に「好き以上の情の深さ」を感じました。嘘偽りのない先生の心そのもの…そして、このアンサーが示すエンドは、受け取る側(加藤と読者)に委ねられているように思いました。

明らかなハピエンともバドエンとも違う、限りなくハピエンに近いメリバのような、人によってエンドの解釈が違うだろう深い話でした。私の中では「好き」よりも「愛しい」の方が、恋愛だけでない多様な「愛情」を含んでいるように思えるので、メリバよりのハピエンですが、そうとは言い切れない重い言葉だなと思います。
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