この世のふたり
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この世のふたり

くも

心中されて遺された二人のレトロBL

ネタバレ
2025年7月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ きさらぎ先生の妻が他の男と心中してしまいます。元から妻とは淡白な関係だった先生ですが、新聞小説を書いていることもあって何かと煩わしい思いをします。そんな先生に、妻が心中した橋の上で声をかけてきたのがむつみ君です。きれいな顔立ちのむつみ君は「わりと有名な先生だと聞いたけど頼りなさそう」とはっきり言います。むつみ君は、先生の妻の心中相手の愛人だったのでした。この世に遺された二人が、なんとなく身体を重ねて、なんとなく一緒に暮らし始めます。家で小説を執筆する先生と猫みたいに先生に寄り添うむつみ君の時間は、ゆっくりのんびり心地良く流れてゆきます。でも、死んだひとを忘れてしまうことや幸せだと感じることに罪悪感を覚えてしまう二人なのでした。明治〜大正くらいの時代設定かと思われます。細やかに描かれる縁側やガラス戸、火鉢や器などに囲まれて、どこまでも敬語で話す二人がこの世で幸せになるお話です。
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