ぼくの狂人くん【コミックス版】
」のレビュー

ぼくの狂人くん【コミックス版】

いとだ旬太

人間の壊れ方に質感がありすぎて冷える

ネタバレ
2025年8月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ 表紙みて明るいラブコメって思った方はUターン。
絵柄に似合わずヤクザBLよりも世知辛く、血も薬もレ○プ、死人もでる。
ナンセンスコメディ的に描いたと後書き読むまで真剣に考えすぎてめっちゃ暗い気持ちになってたので、
ある意味後書きに救われたとでも言うべきか…。

春日部がみて憧れたアニメの世界観と、春日部の現実とのギャップに心がやられる…。
テレビの前で話した夢のことを話さなくなって、次の夢を無邪気に語る春日部のことをみて、人生の余生の準備をし始める檜。
お互い腹の底は明かさず、ただ、明るいテンションで描かれてる。
渦中にいる当人たちにとってのテンションと覗き見てる読者のテンションの格差にリアルを感じる。
不幸か幸せか、普通か普通でないかなんて安易に口に出してはいけないし本人に言うものでないよね…。
お前は普通じゃないし不幸だよって言われて、
幼児退行して檜の手の中にすっぽりおさまってしまった。春日部にはずっと不幸を知る前の姿でいてほしかったなと一読者として思う。
檜は春日部に狂わされた元普通の人で、すべての準備を済ませるのは無理だったし限界が近かったんじゃない?もともとヤクザなるつもりなんてなかったし。無理してたんだろうなと。マッチに火を点ける手が震えちゃってる時点で春日部に負けてたんだよ…。
柊によって、「狂人」が二人、完成しちゃった。

そして、春日部の内面が一切描かれてないのが怖い。
檜に対してどんな感情を抱いてたのか誰も知らない。
人間の壊れ方が質感ありすぎて、ひんやりする。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!