蛍火艶夜 単話版
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蛍火艶夜 単話版

amase

白黒の空がブルーに見える

ネタバレ
2025年8月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ こんなに情緒がめちゃくちゃになるBLがあろうか。
愛憎悲哀に満ち満ちた世界にBLという愛が光差す。
終戦間近の特攻隊、命の千切れる音、夏の前、少年たちの叫び。
戦時中の閉鎖的な空間で生まれた少年同士の愛を、見てきたのか?と思わせるほどの説得力がある画面で展開する作者です。
ひりついた感情とそれを許さぬ世情、悲恋など陳腐な表現と思わせるほど見事に描いています。
特に素晴らしいのは、題材は大変重く、日本人である我々に決してファンタジーやフィクションではないと殴りかかるほどの悲しみを描きながら、そのなかに少年同士の明るい日常を織り交ぜることです。わたしはそこに救われながらもこの青年たちの煌めきは戦時下にあるのだと何度も絶望しました。
BL愛好から反戦に思想が振り切りそうになるほど登場人物たちのドラマが読む人の心を掻き乱します。

漫画を読んで匂いや光、温度や風を感じる名作に出会えること、ありますよね?この作品がまさにそうです。
二次元に五感を刺激されたい方、燃えるような悲しみと温かい涙を欲する方にお勧めします。
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