このレビューはネタバレを含みます▼
すごく良かったです。
親と折り合いが悪く、大人を信じられなかった中学生の時、親にあてがわれた家庭教師の誠にも心を開かず反抗的だったのに、誠が勉強だけでなく、気持ちまで包んで、信じて寄り添ってくれたお陰で、素直に成長できた杏介。教師志望の誠は本当に教師らしく、素で相手の心を大切にする誠実な人。それなのに現実は上手くいかず、再会した杏介に情けない姿を沢山見せることに。
作者さんの心理描写がすごく丁寧で、二人の気持ちがすごく沁みてくる作品でした。憧れて恋した誠に再会したら、顔色悪く辛そうで、でも昔と変わらず優しい。そばにいて誠を助けたいと思う気持ちや、漠然とした憧れは消えていき、苦しくても藻がいている姿も含めて愛しくなっていく気持ち。誠の、頑張り過ぎて空回りする姿や、逆境でも生徒の成長を喜べたり、ただ杏介の将来を思う優しさ。
大人でも、上手くいかず心が暗く沈むこともあるし、まだ社会に出てない若者は、大人の余裕に憧れを抱くこともあるけど、そんな二人が表面的なものでなく、一番大事な人間性を感じて、愛して寄り添うところが良かったです。
展開も面白くて、大学生と中学生での出会いで杏介が誠に心を奪われるくだりや、再会後の誠の境遇と杏介が誠を思う気持ち、誠の気持ちの変化や失望されたくないと思う気持ち、付き合ってからの二人、全部、とても響いてきます。
キャラも良くて、杏介から心を向けられる時の誠の素直な可愛さがすごく良い。杏介の、誠の弱さも含めて愛する大きさもすごく良かったです。元々杏介にはそういう器があったのだと思うけど、それを開かせたのは大学生の誠の導きだと思うと、真っ直ぐな誠の心根がすごく素敵だと感じました。