皇帝と女騎士
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皇帝と女騎士

Team IYAK (winter・heyum)/G.M

文句なしの傑作

ネタバレ
2025年8月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 他媒体では完結していますが、コミックは3巻までしか発刊されていないのですね。
他の方もコメントされていますが、作品の世界により没入できるのは縦読みバージョンかと思います。
ストーリーのオリジナリティと緻密な構成、キャラクター設定、テンポの良さが相まって唯一無二の珠玉の作品に仕上がっています。絵はキラキラ美麗な感じではありませんが(陛下は常にキラキラしていますが笑)、ポリアナをはじめどのキャラクターも一人一人個性がはっきりしていて味があります。

エンディングまでに数多くのイベントがありますが、どのエピソードも引っ張りすぎずに、どんどん次のストーリーに展開していくので中だるみせずに一気に読ませてくれます。ストーリーはポリアナの過酷な少女期を経て、敵国の将のルクソスと出会うことで、彼女の運命が想像もしなかった方向にどんどん切り開けていきます。彼女の持ち前の不屈の精神と賢さ、ルクソスへの揺るぎない忠誠心をもって誰もが認める騎士という立場を築き上げつつも、最後の最後まで恋愛要素を持ち込まなかったところがこの作品の最大のよさだと思います。

ポリアナは終盤になりやっと陛下に対して恋心を抱いた自分に気づきつつも、最後まで陛下から賜ったウィンターの名を諦めることができず何度も逡巡し、そのくだりで結構な話数を費やしています。テンプレ的な少女漫画的展開だと豪快な男前ヒロイン(でも絵柄は美形)が完全無欠のヒーローと最初は衝突しつつも、なぜか溺愛されたらもうハッピーエンドというオチが散見されますが、この作品では、そういったお約束はことごとく裏切られます。ストーリー中盤で、国土統一という目的を達成したルクソスはポリアナに対する恋心を自覚しつつも、政治的理由より皇妃を3人迎えたり(このあたりでとまどう読者もいそうな)、ポリアナとの関係が一気に変化したのもロマンチックとはいいがたいイベントだったり、でもこれらの一つ一つのエピソードが欠けたら二人は結ばれなかったと思うので、本当にうまいストーリー構成だと思います。

ポリアナという人物像は決して完全無欠のヒロインではなく、自己肯定感の低さが故、切羽詰まり、もがき苦しみながらも強い信念と矜持を貫く姿が非常にうまく描かれていて心が揺さぶられます。ストーリー序盤と終盤の騎士の誓いのシーンは感動の一言です。ぜひ多くの人に読んでもらいたい作品です。
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