ふれないでリトルスター【電子限定描き下ろし付き】
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ふれないでリトルスター【電子限定描き下ろし付き】

マミタ

作者買いです

ネタバレ
2025年8月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ マミタ先生の描くオメガバースの世界。Ωが社会的に虐げられて、ひたすら辛い思いをするというような類のお話ではなくて、誰よりも大切な人と一緒に生きるために、αもΩも、それぞれ苦しみもがきながら、共に困難を乗り越えていくお話でした。

Ωのユキは、ずっとヒートがこないまま過ごしてきたけれど、長年αのハルと暮らしてきたせいで体質が変化して、18歳のハルの誕生日にハルからキスされたのがきっかけで35歳までの分のヒートが一気に押し寄せ、命にも関わるような大事態に発展してしまいます。ユキとハルは家族の死を2人で寄り添いながら乗り越えて、10年間お互いを支えに生きてきました。そんな彼らにまた更なる試練を課すなんて、「神様そんな殺生な~!」って思いました。2人の葛藤が凄まじくて、それでも何としてでも一緒に居ようと身を削るように足搔く様が痛々しくて、傍で見守るβの洋乃もどれほど辛かったことか。マミタ先生の丁寧な心情描写のおかげで全員に感情移入しまくって読みました。割と最後の方まで辛い状況は続くのですが、試練を乗り越えた先には、大きく成長したハルと心身ともに安定して落ち着いたユキがいて、そこからはもう幸せしかありません。大学を卒業して帰ってきたハルとユキが気持ちを伝えあうシーンには泣きました。

オメガバには珍しく、βの存在感が際立っているお話で、2人の良き理解者である洋乃がとんでもないファインプレー連発で、彼無しに2人の幸せはありえないと思えるほど。一見不愛想で厳しい言葉を放つこともあるけれど、ペットのピコちゃんに対する思いなど、洋乃の言動の根底には気遣いや優しさがあるんだなぁと分かります。
また、マミタ先生の作品と言えば動物キャラですよね。今回はオウムのピコちゃんでしたが、いつになく主張が激しくて、登場の度にその場の空気を全部持っていくから目が離せませんでした(笑)人間の心に敏感に反応してしまうピコちゃんが、ラストは情緒が安定して大人しくなってて、こういう演出もマミタ先生らしくて大好きです。
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