垂直線上のストイシズム
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垂直線上のストイシズム

崎谷はるひ

この映画はあなたのために

ネタバレ
2025年8月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ 弥刀さんの作り上げた映画はそれはもう素晴らしいものなんでしょうね。誰か大切な人のために作られた、心からのものっていうのは、それがどんなものでも美しくって尊いものなんだよ。それがその人のためだけじゃなく、一般に公開されて関係のない人々もそのおこぼれに預かれるっていうのは幸せなことだと私は思う。弥刀×トモキ編はモラトリアムが弥刀さん編で、ストイシズムがトモキ編だったんだなと最後まで読むことによってわかりました。どうしようもなく停滞していた弥刀さんはトモキの言葉によってストーリーが動き始めました。本当はトモキの世界も彼の厳格なまでのストイシズムによって、凍りついていたんだけど、それを色鮮やかに蘇らせてくれるのは弥刀さんだけなんだよ。最初は弥刀さん知靖さんとも寝るし、なんとあの姫とも昔結婚してたし、靖那のことはどうしようもなく捨てられないし、そのどうしようもなさ、あまりの甘さ、人の良さに呆れるというか…周囲の人に構いすぎる性質に辟易する思いだったのですが、そんな彼でなければ作れない世界、トモキに与えることのできる感動みたいなものも生まれなかったのだと思うと、まあ…とんでもない回り道してしまったようなものなのかも、と思えるようになりました。そもそも、どこにも寄り道せず、間違わず、正解だけに価値があるというわけでもないというのに。時々自分は本当に正しいもの以外取るに足らないものだみたいに考えてはいなかっただろうかと考えるきっかけにもなったというか、この一冊でかなりたくさんのことを気付かされた気持ちです。2人の恋愛はあまりにも若くて、苦くて、もう勝手にしたら?とすら思う瞬間があったけれど、このシリーズの中でもこのお話は最高傑作といっても過言ではないと思う。もちろんそれは私の勝手な感想なんだけど、本当に素晴らしいものはまだこの世界にたくさんあるという事に気づかせてくれたことに感謝です。ありがとうございました。
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