やさぐれ男、異世界で色悪騎士が愛する王子の身代わりとなる
小中大豆/奈良千春
言葉選びのセンスが秀逸で重いテーマに感動
ネタバレ
このレビューはネタバレを含みます▼
軽口を叩くシーンはあるけれど全体的に明るい印象はなくて、夜のシーンが多いこともあり暗めでテーマも重かったです。だけど、極度の困難にあっても未来を信じ希望を持って皆を導く礼夜の姿は、夜を照らす一筋の光のようでした。
ストーリーの軸は「国取り合戦」で、礼夜が日本での経験を元に知略・突飛な戦略でもってのし上がっていくまでが、時代劇のようで読み応えがありました。そこへ王子とのやり取りやヴィダールとの愛などが合わさってきますが…全ての事に生死が絡んでくるんですよね。何もかもが命懸けなので、展開に重みがありました。
恋するのも命懸けで、その表現が秀逸でした。恋に…一般的な「落ちる」ではなくて「堕ちる」と言っていますし、「用心していたのに、いつのまにか深く囚われていた」とも言っていて、礼夜が恋におちる事を負のイメージで捉えているのがよく分かる表現でした。
一般的な人ではなくて、主人公・礼夜が恋におちた時の心境・状況を、これ程上手く表現できる作家さんは稀だと思うし、言葉選びのセンスに感動しました。
礼夜が、愛だ恋だの感情を心底軽蔑していて全く信じていない、そういった感情を持つことさえ許されない…そういう十字架を自分自身に課しているのが伝わってきて、持ってしまった時の絶望が「堕ちる」の文字の違いに感じられて深いなと思いました。
系統的には『気難しい王子に捧げる寓話』に似ていて、ストーリー性重視の作品かなと思います。
いいね