夜も、朝も【電子限定描き下ろし付き】
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夜も、朝も【電子限定描き下ろし付き】

一輪薔薇の花言葉

ネタバレ
2025年8月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ バーの店長升麻と書家の藤は高校時代に先輩後輩として出会い10年以上経ち、今は同棲2ヶ月目の恋人同士。
劇的な何かが起こるわけでもなく何でもない日常を描いた話です。
平凡な毎日にささやかな幸せというのは私の歳になるとかけがえのないもので、それはアラサーのこの2人にもそうなんだなと節々から感じられ、読んでいてとても穏やかな気持ちになりました。

でもそんな中で所々感じる藤のチクっとした痛み。寡黙な藤の表情から不安が私にまで伝わってきて落ち着かなくなる。
実はこの2人は過去一度別れているんですね。
自分勝手で臆病だった覚悟がなく怖くて逃げた…升麻はそう振り返る。確かにその通り。ただ夢を二の次にして自分を追って同じ大学に来ようとしている藤を見て、自分の存在が一人の男の生き方を変えてしまうかもしれない恐怖を覚えたこと、頭ごなしに責める気にはなれない。好きじゃなくなった?という問いに「うん」と嘘を言ったことも悲しかった。藤にしてみれば突然のことで意味不明でこちらも可哀想なのはもちろんなのだけど、今は当時の升麻の気持ちを理解し共感している。賢い男だなあと感動した。
それでもね、話が戻るけど、藤は完璧に乗り越えたのかというと違うんだなと思わせるシーンが切な過ぎて。突然いなくなってしまった当時の同じ時期が来るだけで不安になって甘えたり、家に升麻が居なかった時フリーズしてしまったり。
私途中まで2人が別れていた期間はせいぜい1年くらいかと思っていたんですよ。それが8年と知った時驚いたのなんの。そして藤が升麻を探しに来たこと、再度の告白も藤からだったこと、いやこの時ばかりは升麻何してるんだー!って思ったね。全て藤が動いているではないか。升麻今度こそ腹括れよ?って思いました。
まあこの話過去と現在を行ったり来たりしていて、現在の升麻を見ていれば既に藤の人生も受け入れているの分かるし、覚悟とかそういう無理やりにじゃなくて自然にそういう気持ちになれたのもよかったと思う。平凡な毎日に幸せを感じられるのは土台がしっかりしているから。8年は長かったけど、一度離れて絆が強まったと思えば意味のない期間ではなかったのかなと。
最後、1本のバラ渡した時の升麻の言葉素敵だった〜。私最近も花言葉にまつわるレビュー書きました。BL読んでると花言葉とかカクテル言葉とかよく出てくる気がする。BLってロマンチックだな。
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