かげふみの恋【電子限定特典付き】
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かげふみの恋【電子限定特典付き】

ロッキー

これは良い伯父甥もの。貴重。

ネタバレ
2025年8月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ 183ページ。短編集。
表題作が、短いながらもとても良い伯父甥ものでした。ちゃんと血縁もあるよ!(小躍り)
『背徳BL』(アンソロジー)収録作です。
押せ押せの甥っ子、お相手である伯父は母親の兄で、父親が伯父の親友かつ想い人に当たります。父親に似ている自分の容姿を利用してでも、伯父を手に入れたい甥。そこに葛藤だったり父親への嫉妬だったり、自分だけを見てほしいという縋るような気持ちが良かったです。それに絡めとられていく伯父の、甥へのいとおしむ気持ち、妹と親友への罪悪感。きっと伯父はもうとっくに、甥っ子をその父親の「影」としては見ていない。その様子が(或いはそう見てはいけないと思っている様子が)、大事にしているな、という印象でまた良い。「大人」としてはまあ色々アウトですけども、それも含めてこの作品は良かったです。
一番良かったのは小道具の使い方で、同じものを見ていても、二人にとっては違ったものとして映っている。伯父にとって、あれは最後に残った自分への戒めだったのだろう……ラストの独白セリフが無くても良いくらい、あの小道具使いがこの作品のキモであると思います。
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・『僕たちはまるで誘蛾灯のように』『籠の中』
オメガバース。主役カップルの、それぞれの第二性に関する抵抗感とか複雑さのある気持ちが良かったです。ただ、このオメガバ設定だと、サブカップル(αの男同士)はあっさり祝福される存在にはならない気がして、理屈屋にはそこがマイナスでした。
・『あなたは冷たい』
途中までとても良かった。ホラー混じりで、謎めいた展開、謎めいた男。この謎めいた男の正体が、個人的にとてもアウトでした。
・『嫉妬と支配欲の共生論』
主人公の男が苦手。お相手側の視点があればまた違うのかもしれないけど、これだけ見ると、お相手の方に「この男のどこがいいの……?」って真顔で尋ねたくなります。
・『今度は幸せになろうね』
転生もの。前世がなかなか悲壮だけど、主人公が本当にお相手のこと好きなんだなぁっていうエピソードでたいへん良かったです。主人公が前世に引きずられてる感じではなく、好きになるべき人を好きであるという感じの潔さがあり、今度は幸せになれるよ、って心から思う。星5つ。
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物憂げな雰囲気が好みです。初読み作家さんでしたが、別のも読んでみようと思います。
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