ロマンチック・ラメント
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ロマンチック・ラメント

左藤さなゆき

運命よりも強い絆

ネタバレ
2025年9月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ オメガバース物はあまり読まないのですが、作家様買いです。
『プリフェクトの箱庭』で、純愛とエロのバランスが絶妙な左藤先生の世界観にハマり、この作品もそんな左藤先生の魅力をたっぷり堪能できます。
『甘美な嘆きの詩』というタイトル通り、恋人を「運命の番」に奪われて以降ただ嘆き悲しむことしかできなかった旭が、元恋人と瓜二つの煌臣と出会いロマンチックな恋を育むことで「大事なのは運命じゃなくて自分の気持ち」ということに気付かされ、前に進む勇気を得る物語です。

しかし、二人が運命より自分の気持ちを大切にすることで、新たに傷つく者も現れる訳で…
単純なハッピーエンドではなく、様々な人物の視点や感情を複雑に絡めているのが、さすが左藤先生という感じで読み応えあります。

個人的にSF的なオメガバースがあまり得意ではないのですが、発情の場面は最低限ですし、オメガバースの原理について論理的な説明の場面を多く挿入しているので非現実感がかなり薄れており、あまり違和感なく読み進めることができました。

本作品で傷つく側となった人物を主人公にした続編があるので、次はそちらを読もうと思っています。
単なる当て馬でなく、その人物を続編で(おそらく)救済するところも左藤先生らしい粋な優しさで、そういうところも左藤先生の作品が好きな理由の一つです。
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