このレビューはネタバレを含みます▼
死んでしまう友達を助けるために、未来の自分から手紙が届き、皆で協力して彼を助けようとするお話。
人生は確かに選択の連続で、選ばなかった先の未来がどうなっているのかは分かりません。後悔をなくすために未来の自分から届いた手紙のアドバイスを実践していく菜穂たちの必死さは、ある意味若者らしい姿なのかもしれません。でも、リアルさがない気がします。それは、パラレルワールドというSF要素が入っているからではないと思います。
いつも一緒にいた友達の一人が死んでしまうのは高校生には衝撃的な事件です。そんな未来を回避しようと努力する姿は青春の1ページだなと思いました。でも、主人公である菜穂はとても考えが浅すぎます。未来からの手紙を読んでも翔の本当のツラさをきちんと理解していないことは明白で、アドバイスがその場しのぎです。そして、死を知ってもウジウジと悩んで出来ないと立ち止まる。彼女からは翔の死を打ち消すための強さが感じられませんでした。
また、翔もだいぶ闇が深いです。希死念慮の強さは、彼の性格や考え方に起因する要素が多く、これを友情で救おうというのがそもそも無理難題なお話です。皆が死に向かわないように道を正しても、結局死のうとしてしまったことを考えると、翔に必要だったのはもっと根本的な心の寄り添いだったのではないでしょうか。
お話のテーマが一人の友達の死という重いテーマであるが故に、高校生らしい勢いだけでは物語として未熟さを感じさせてしまう気がしました。死と向き合うためには、もっと考えて、もっと理解し合う努力が必要だったのではないでしょうか。でもそれを高校生がやるには荷が重すぎる。物語のテイストや展開とテーマが上手く溶け込まなかったように思いました。