金髪のダーリン【電子限定描き下ろし付き】【コミックス版】
」のレビュー

金髪のダーリン【電子限定描き下ろし付き】【コミックス版】

加藤むう

みんなそれぞれもがいている

2025年9月26日
174ページ。
「ゲイだから」とかじゃない、「この人だから」好き、っていうのが感じられて、とても好みでした。
「金髪」「オネエ」などの要素も記号的な描かれ方ではなく、なかなかこういう描き方ができる作者さんは居ないな、と思う、月並な表現ながら「血の通った」感じ。
盤の金髪の理由や女言葉の理由が切なく、かつ性自認があいまいなボーダーライン上にある感じが良かったです。中性的?子供っぽい?そういう言葉がピッタリとは当てはまらない、「これが盤という存在である」という印象。実際、ボーダーライン上に居る人間っていうのは、それが性的なものであれ何であれ、よほど気が強くなければ気持ちの収まりが悪いのではないかと思います。そんな不安定さに、ギュッと胸を締め付けられる思いがしました。
この不安定さを受け止めてくれるお相手の正志ですが、この人は自分の意志が明確に強くて、盤を受け止めるには最適です。かといって、スパダリ的完璧な風なキャラではなく、けっこうなひどいこともしてしまう……けど、それを誤魔化すことなく謝れるところが誠実。
また、盤の想い人であった、高校の同級生。最初は「なんだコイツ何がしたいんだよふざけんな」って思ったんですが、彼は彼でずっと引きずってたし盤を大事に思ってたんだろうな、と。盤の恋が叶わないのと同じように、彼は大切な友達を失うわけですよ。どちらもつらい、どうしようもない食い違い。
それぞれがそれぞれにもがいてもがいて、やっと水面に顔を出して一呼吸……これから先もいろいろあるかもしれないけれど、転んだってまた起き上がれる、そんな気持ちになる読後感でした。
いいねしたユーザ2人
レビューをシェアしよう!