このレビューはネタバレを含みます▼
吸血鬼物作品は数多あれど、みちのく先生が描くと「見たことのない」唯一無二の世界観になるのがすごいです。
次第に明かされる人間関係、最後まで予測のつかない緊張感ある展開と、先が気になり一気に読んでしまいました。
舞台は現代から始まり、1960年代、江戸時代と、様々な時代を背景に「昭彦×和重」「将門×師夏」らの生き様が描かれています。
登場人物が時代ごとに少しずつ髪型・服装・雰囲気が変化しているのも見どころで、和重・将門ともにどの時代の服装も似合っていて、どの時代にも通用するイケメンなのが、さすがみちのくアタミ先生の画力!(個人的には、将門様のコスプレ的麗しさが最高です)
個人的に、特に魅力に感じたところを挙げると
・吸血シーンがとにかく色っぽい!(もちろんラブシーンも!)
・登場人物みんな、お耽美系イケメン
・悲しいシーンもあるけれど大方ハッピーエンド
・「不老不死は果たして幸せなのか?」という哲学的な問いについても考えさせられる
ところです。
施設育ちで孤独に生きてきた昭彦と、幸せな家庭を築きながら吸血鬼になったことで孤独になってしまった和重。
孤独な二人が運命的に出会ったものの、和重は昭彦を自分と同じ境遇にさせたくないし、かといって昭彦の最期を看取る覚悟もできず、一度は昭彦を遠ざけようとします。
妻のみならず、老いて亡くなっていく娘まで看取らなければならなかった、永遠の命を持つ和重の深い喪失感を思えば、昭彦を拒絶する気持ちも納得できるんですよね。
しかし、昭彦の強い想いにより和重の気持ちも徐々に変わっていき、あるアクシデントを切っ掛けに和重は大きな決断をします。
宝石である「レッドベリル」には「一度決めた道をまっすぐ進む」という意味もあるそうで、和重が下した決断は今までの信念には反するかもしれないけれど、「信念より大切なものもある」というメッセージが、『レッドベリルにさよなら』というタイトルに込められているのではないかと感じました。
実際、和重の娘が今わの際で「お父さん 幸せでいて」と願ったように、その決断をした後の和重が(罪を抱えつつも)幸せそうであることが、決断が正しかったことを最も証明しているのではないかと思います。
最初は悪者に見えた将門が、和重が寂しくない人生を送れるよう気に掛けていたり、師夏を溺愛しているところも萌えポイントです。