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佐藤アキヒト

一番好きな作品

ネタバレ
2025年9月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ 大好きな作品が電子コミック大賞にノミネートされたとのことで、微力ながら応援をと思いレビューさせていただきます。
核心に触れないように気をつけていますが、以下ネタバレを含みますのでご注意ください。

この作品はアキヒト先生の圧倒的画力だからこそ成し得る、多くを語らずそれでいて感情の揺れ動く様じっくりと味わうことができる、至高の一作と言っても過言ではありません。鳥をかすがいとするストーリーが斬新で、お互いが様子を伺いながら少しずつ近づいていく焦れったさが非常に魅力的です。一巻はノア視点なのでまだカイの内面を深く知ることはできないのですが、「もったいない」というノアの発言に対する表情をはじめとして、ノアの誠実で素直な言動に心を動かされているカイの様子が要所要所で見て取れます。カイは特に言葉数も少ないし表情の変化も大きくないので、何度も読み返しては小さくも大事な変化に気づいて悶えてを繰り返しています。次巻以降でカイの想いを知ることができるのが楽しみでなりません!
そして、この年ごろ特有の不安定さや未熟さを描かれるのが本当にお上手!珍しく声を荒げたノアに対してその場で受け止めてなだめることができないカイという関係は、互いを好意的に思いつつもまだ歯車がうまく噛み合っていないことがはっきりと浮き彫りになっていい。外から見ている分には「ちゃんと話し合ってぇぇぇ!」と執り成したくなりますが、その後の展開が期待を上回りすぎてしばらく余韻で頭を抱えました。ありがとう、故障したシャワー。ありがとう、バスタブ。
イチオシであろうサンルームのシーンはもちろんのこと、個人的には鳥を助けるノアの後ろ姿をぜひ見ていただきたい。カイも目を奪われているように、鳥を優しく包み込む手や慎重にワイヤーを切る手つきなど、あの一コマにノアの鳥に対する姿勢がにじみ出ています。このノアが本当にいい子!成績優秀者であることに胡座をかかず、謙虚で自己肯定感が低いノアがいじらしくて「がんばってるね」と抱きしめたくなる。
一冊でも十分満腹感を得られる内容ですが、もっともっとこの二人の成長を見守っていたい……!そして想いが通じ合った幸せな二人を拝みたい……!二人とも家庭がネックっぽいのでこれからたくさん悩むのかなと思いますが、どうぞ手を取り合って乗り越えてくれ……!
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