ギヴン
」のレビュー

ギヴン

キヅナツキ

すごく惜しい

2025年9月29日
由紀×真冬、秋彦×雨月といった最終的に結ばれるカップルよりも、むしろ結ばれない(由紀に関しては結ばれないという表現は違う気もするが)関係の方が圧倒的にお似合いに感じてしまう私⋯。
物語全体を通して、そちらの組み合わせの方が熱量が高く、互いに深く想い合っていることがひしひしと伝わってきました。

その後に描かれる立夏×真冬、秋彦×春樹の関係も悪くはないのですが、以前の関係性を超えられない、どこか熱量が足りない印象が拭えません。
これは何よりも、雨月と由紀というキャラクターがあまりに魅力的で、存在感が突出していることが大きいのかなと。

バンド描写においても同様で、ギヴンよりもsyhの方が圧倒的に魅力的に描かれており、作者が“魅力的に描く”ことに成功している分、さらにその先、それを超える物語まで見せてほしかったと感じます。

とはいえ、セリフ回しや感情の揺れ動きはとても美しく、胸を打つシーンも多く盛り込まれていたのは確か。表現力の高さ、そしてその美しさには圧倒された。これほどまでに感受性豊かに、一人の心情を痛々しいほど読者に刺さる形で描けるからこそ、惜しい作品だと感じてしまう。

なお、賛否が分かれている柊mixについては、個人的には好きな内容。
過去編をうまく補完しながら描いてはいたんですが、あまりにも主要キャラ、特に立夏の存在感が薄くなってしまっていたので本編よりもスピンオフとして楽しむ方がしっくりくる内容でした。
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