月とピエタ
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月とピエタ

大地幹

成長に向けての一歩?

ネタバレ
2025年10月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ さまざまな苦労を経て書籍化が叶ったという経緯を某所で拝見し、読むと決めていた作品。早速上下巻読みました。

絵は丁寧で描き込みも繊細、コマ割りや構図も見やすい。ストーリーとしては作者様のいう通りあらかた王道展開、主人公が都度モノローグで心情を語っているため難しく考えずに読めます。

前提として主人公の人物像が「美形で大学一モテる」という設定と結びつきにくかったのは気になった。あと誘いを断れないのは分かるが「嫌われたくないから」だけで好きでもない女性と行為直前までいくのは、主人公の家庭環境を加味しても疑問ではある。
百合川先生は良いキャラ。ミステリアスな人が実はお喋り好きだったりするの可愛いし分かるなぁと(笑)
上下巻通して印象的だったのは「主人公たち2人以外は悪(敵)」みたいな空気で描かれている世界観。その描写があからさまでややリアリティに欠けるかも。

読む前にちょっと自分の中で期待値を高めすぎていたからか(個人的にはエロは必須じゃないのでそこは無くてもマイナスではないです)思わず膝を打つ様な圧倒される何かがある感じではなかったかな。
主人公は葛藤の末「自分を好きになれない、理解者がいなくて寂しい、周りは分からず屋」の状態から「自分の味方は自分、先生は同士で理解者、周りは相変わらず分からず屋だけどもう気にしないから楽!」という段階でエンドを迎えている(ように見える)ので、主人公の成長物語という視点でみても、読後も完全にはすっきりしきらない感じ。
最後「一人じゃない」と思えた二人ですが、本当の意味で生きづらさから解放されるには根底にある他責の念を振り払えたとき…つまりもう少し時間がかかるのかなと思います。でも一人より、二人で歩める一歩が心強いですよね。
私も百合川先生の解剖学の授業受けてみたいなぁ。
(身なりを整える前の感じも好きです(笑)

※おまけとして上巻の巻末に「付き合ってからの二人」の漫画が先に出てくるので楽しみをとっておきたい方は注意です。
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